明子館長の佐賀発見!#13
第12回 夜空の星、里山の星 2026年6月12日

©ta.ito
5月の終わりから6月にかけて、九州では梅雨入りというこの時期、《ゆめぎんが》のある武雄市保養村では、日没後の西の空には金星が圧倒的な輝きを放ち、明け方の東の空には火星や土星を見ることができます。
そして、この時期は地上にも!
そう、科学館前の「せせらぎプロムナード」にたくさんの蛍が飛び交います。
――里山の星
蛍は、人里離れた大自然ではなく、小川や田んぼ、ため池、雑木林、そして人々の暮らす集落がモザイク状に寄り添う「里山」に生息します。
蛍の中でも、よく光るゲンジボタルは、幼虫の時に川や用水路に住むカワニナという2~3cmぐらいの巻貝を食べます。
このシーズン、週末には宇宙科学館前の芝生広場では、「武雄温泉保養村・蛍まつり」が開かれ、出店が出たり、武雄市で盛んなモルック競技大会、ビンゴ大会などが繰り広げられ、たくさんの市民で賑わいました。
《ゆめぎんが》でもテントを張って、自然観察会を開催しました。学芸員自ら採取してきた保養村の小川にいる水生生物を、子どもたちと一緒に顕微鏡で観察しました。学芸員はどんな質問にも楽しそうに答えていました。
顕微鏡で観察
サナエトンボのヤゴ
モルック競技大会
《ゆめぎんが》の学芸員によると、保養村には数百種を超える昆虫や水生生物が確認されているそうです。これまでに世界で確認されている生き物の種類は175万種、まだ知られていない生物も含めると、地球上の総種類は約500万~3,000万種にのぼると推定されています。
私たちの目の前に広がる保養村にも、これだけ多様な生き物が息づいています。それぞれが生態系の一員としてつながり合い、この豊かな環境を支えていることに驚かされます。毎年保養村の蛍を観察し、記録を続けている学芸員によると、今年の蛍の数は観察記録を取り始めて以来、最も少なかったそうです。
里山のモザイクのどこかが壊れたり欠けたりすると、そこにいる生き物たちの命に影響が及びます。蛍の光に目を奪われがちですが、その命を支えているのは川底で静かに暮らすカワニナです。主役を支える脇役のような存在ですが、里山の豊かさは、こうした目立たない生きものたちに支えられているのですね。

私たちが目にする蛍の光は、その生涯のほんのわずかな時間です。その短い輝きの裏には、川の中でカワニナを食べながら過ごした長い一年と、里山を形づくるさまざまな生き物たちの営みがあります。
アメリカの海洋生物学者であり、作家のレイチェル・カーソンは『センス・オブ・ワンダー』の中で、知ることよりもまず感じることの大切さを語っています。私はJAXAで地球観測衛星の仕事に携わっていた頃、この本に出会い、大切な一冊となりました。
夜空の星に驚くことも、里山の蛍に心を動かされることも、きっと同じ「不思議だな」という気持ちから始まります。
美しくもはかなく光る蛍の光を見つめながら、自然のつながりの奥深さと、その豊かさを未来へつないでいくことの大切さを感じる夜でした。
佐賀県立宇宙科学館
館長鈴木明子
ホタル幼虫の上陸観察会(ゆめぎんが)
https://www.yumeginga.jp/blog/2026/_2208.html
モニタリングサイト 1000 里地 調査マニュアル ホタル類(環境省生物多様性センター)
https://www.biodic.go.jp/moni1000/manual/8Firefly_Manual(ver3.2).pdf
自然環境の保全と自然とのふれあいの推進(令和7年環境省環境白書・環境型白書/生物多様性白書)
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r07/index.html
武雄温泉保養村ほたる祭り(武雄市観光協会)
https://www.takeo-kk.net/event/002715.php
モルックについて(日本モルック協会)

