明子館長の佐賀発見!#5

第5回 有明海の海苔漁と “ら・かんぱねら”  2025年4月10日

ほぼ半月に1回ずつ、佐賀空港と羽田空港を行ったり来たりしているのですが、

佐賀を出るときは、朝一便の飛行機に乗ることが多いです。

佐賀空港を飛び立って間もなく、地上を見下ろすと、

たくさんの海苔の養殖場が見え、

秋から春にかけては朝の漁に出る船が行き来する様子がわかります。

 

有明海は、佐賀、福岡、長崎、熊本の4県に囲まれた海。

一日のうち、干潮と満潮が2回ずつ繰り返され、

その干満差は5~6メートルもあり日本一、

干潟の面積も日本一と言われています。

滋養に富んだ干潟には、渡り鳥やムツゴロウなど様々な生き物を

見ることができますが、そちらは別の回の話題に回すとして、

 

ここでは、日本最大級の生産量を誇る佐賀の有明のりのお話です。

 

佐賀で食べる海苔は、とにかく美味しいです!

厚くてつやつやしています! 

そして安い!(気がする)

でも、多くの佐賀の人たちは「海苔は買わん、でもいつでも食卓にあるもの」

と言うのです。

自分たちで作っていたり、もらったりするのだとか。                                         

それほど身近で、生活の一部なのですね。

 

え~、横浜で暮らしてきた私にとって、海苔は高級品。

高いので、手巻き寿司は安い破れ海苔を使う。

そう思ってきたので、びっくりしました。


有明海には複数の河川が流れ込み、栄養分が豊富であること、

淡水と海水がほどよく混ざり合い、海苔の養殖に適した塩分濃度であること、

干満差が大きいことで、干潮時には太陽の光をたっぷり浴びて光合成すること、

独特のうま味の海苔はこうした有明海の豊かな自然環境から生み出されると聞きました。

                                       

でも、それだけではない、

地元の海苔師さんたちの長年の技術と努力があって出来上がっているということを、

県内で先行上映された“ら・かんぱねら”という映画を見て知りました。

 

佐賀生まれの実在の海苔師の徳永義昭さんをモデルに、 

ピアノを弾く人なら憧れる超難関、リストの「ラ・カンパネラ」を、 

「弾きたい!」という突然の衝動から、海苔漁の傍ら猛練習をして、 

全曲を弾けるようになるまでの物語。

 

俳優の伊原剛志さんと南果歩さん演じる徳永さんご夫婦がとても素敵でした。 

そして、伊原さん自身も一念発起して「ラ・カンパネラ」を弾けるようになったとのこと。

映画のパンフレットによれば、ピアニストの辻井伸行さんは5分で、 

徳永さんは7分前後で、伊原さんは11分で弾くそうです。 

日に焼けた大きな手で弾く11分の「ラ・カンパネラ」は、 

朴訥(ぼくとつ)でなんとも味のある音色を奏でていました。 

 

私個人としては、海苔漁はこうやって、有明の海とひいては地球の自然と 

共生しながら営まれているのだということを少しでもわかったことが嬉しい収穫でした。

 

そして、主人公が腱鞘炎になりながら手に貼られていた湿布は、 

佐賀のサロンパス!でしたが、地元の漁協をはじめ、県、市、企業、団体、個人の方々、本当に多くの方が関わってできた佐賀愛に満ちた作品だということが、映画のエンドロールからも伝わってきます。

  

「夢があれば生きていける」

「努力をすれば夢は叶う」

 の映画全体に流れるメッセージは、これまで私がよく聞いてきた 

宇宙飛行士の言葉ともかぶり、フィナーレは、夫婦愛、家族愛に満ち溢れてジーンときました。

  

“ら・かんぱねら” お勧めです

 

 佐賀県立宇宙科学館

 館長 鈴木 明子 

 

有明海の風景(佐賀県)

https://www.city.saga.lg.jp/main/7261.html

のりができるまで(佐賀県有明海漁業協同組合)

https://www.jf-sariake.or.jp/page/process.html

ら・かんぱねら

https://la-campanella.net/

有明海

地球観測衛星「だいち」からみた有明海(c)JAXA

ノリ摘み取り

ノリの摘み取りの様子(佐賀県有明水産振興センター提供) 

らかんぱねら 

 映画「ら・かんぱねら」のパンフレット表紙