ハードディスク(パソコンの記憶装置)
ハードディスクは現在のパソコンには不可欠の装置です。パソコンで使うワープロや表計算ソフトなどのプログラムをすぐに使える様に保存したり、作成した文書などを記録し、いつでも使えるようにしているのがハードディスク装置です。
ハードディスクの記憶容量はますます大きくなっています。
ハードディスクに記録出来る情報量はますます多くなっています。パソコンの出始めには10MBとか20MBというハードディスクでも高価でしたが、今では250GB(1GBは約1000MB。従って250GBは20MBの12500倍の容量を持つ)とか300GBなどという大容量のハードディスクが簡単に入手できる状態です。
ハードディスクを分解してみましょう!
手元に現在は使っていないハードディスクがありますので分解してみましょう。このハードディスクの容量が幾つだったかよく覚えていませんが10GBくらいだったもしれません。ハードディスクには特殊なネジが使われていて簡単にヘ分解できない工夫がしてあります。このため中を見てみたいと思いながら今まで手つかずでいました。今回は何とか分解にチャレンジしてみましょう。
*ハードディスクはパソコンのこの部分にあります
もちろんパソコンによって違いがありますが、ハードディスクは写真の様にパソコンの本体の中に納められています。
このパソコンの場合上側のハードディスクがもともと購入したときについていたものです。下の2つのハードディスクは後で追加したものです。*いろいろな種類のハードディスクがあります
ハードディスクのサイズも様々です。500円玉と比較して見てください。こんなに小さなハードディスクもあります。
このハードディスクの先端に小さな多数の穴が見えますがこれが接合端子で、デジタルカメラ等の対応する端子に差し込んで使用します。
1.これが今回分解するハードディスクです
パソコン(デスクトップパソコン)の中から取りだしたハードディスクです。通常パソコンを使っていても目にすることは少ないかもしれませんが、パソコンの重要な部品の一つです。
しっかりと記録しなければなりませんので頑丈な作りになっているようです。ずっしりした重さがあります。
ハードディスクには特殊なネジが使われていて簡単には分解出来ないような工夫がされています。
2.ハードディスクの裏側です
裏側には電子部品が並んだボードが取り付けられています。右側の方から配線がハードディスクの内側につながっています。
左側にはパソコン本体と連結すし情報のやりとりをするコネクターと電源供給コードの差し込み口があります(次の写真を参照して下さい)。
3.パソコン本体とのコネクター&電源供給コードの差し込み口
右側の横に長い多数の針のようなものが出たものがパソコンの本体と情報をやりとりするコネクターです。このコネクターとパソコン(パソコンのメインボード)はコネクターケーブルで結ばれます。 左側は電源コードの差し込み口です。 パソコンの中には、増設のための予備の接続端子や電源ケーブル等が用意されていますので、ハードディスクの増設も比較的簡単に行うことが出来ます。
4.まず外すことの出来るネジを外します
外側のプラスネジは簡単です。しかしここには、「はがすと保証出来ない」(IF SEAL BROKEN, WARANTY VOIDと書かれています)と警告が書いてあるシールがあります。いずれにせよ、使わないハードディスクですから保証は関係ありません。ハードディスクのこちらの側には2カ所このようなシールが貼られています。
5.早速困った問題です!
特別なネジ(星形)がシールの下から現れました。このネジはプラスのドライバーでは回すことが出来ません。DIYの店に行ってもこんな形のドライバーは売ってないかもしれません。手持ちの工具等をいろいろ試してみるしか方法はなさそうです。
6.左のネジの外側のものはラジオペンチで回せそう
とりあえず左側の星形のネジの外側のものは先の細いラジオペンチで回すことが出来そうです。外せるところから外すことにしましょう。
7.小さなマイナスドライバーで回せそう!
右側の星形ネジは小さなマイナスドライバーで回りそうです。小さなマイナスのドライバーですからドライバーに少し無理がかかりますが方法がありません。
幸いドライバーの先が少し欠けただけで無事にネジを外すことが出来ました。
左側の星形のネジは下につながっているようで、ここで無理をして外さなくても外ブタを開けることが出来そうです。
8.外ブタを外す前に裏側の電子基板を外します
裏側の電子基板はプラスネジで止まっているだけですの、何の苦労もなくネジを外すことが出来ます。
9.電子基板が外れました
電子基板を外しました。下には4本の針のようなものが見えます。これはたぶん、ハードディスクの磁気ディスク(プラッタ。磁気ディスク=そこに記録される部分)を回すためのスピンドルモーターへの電源供給のための接点でしょう。
裏側にも「はがすと保証しない」と書いたシールが貼られた部分があります。はがしてみましたが、この下にはネジは無く、単に穴が空いていました。たぶん点検口なのでしょう。磁気ディスクの状態を外ブタを開けなくても点検出来るように用意されているのかもしれません。
10.電子基板とハードディスク内部をつなぐコネクターを外します
電子基板から内部に配線が伸びています。この配線はコネクターでつながっていました。コネクターの外側の小さなツメを外してコネクターを抜きます。これで電子基板は完全に本体から外れました。電子部品の仕組みや働きは肉眼で見てもわかりませんので、電子基板部分についての分解はここまでです。
11.めでたく外ブタが取れました!
磁気ディスク(プラッター)は鏡のように曇りのない鏡面仕上げです。CDのような虹色に光るのではなく、全く鏡と同じです。
左側から出ているものは情報の書き込みや読み出しを行う磁気ヘッドを動かす位置決め装置(アクチュエーター)です。
12.磁気ディスクは3枚重ねられていました
磁気ディスク(プラッター)3枚にそれぞれ磁気ヘッドのアームが伸びています。アームがそれぞれの磁気記録面に伸びているようです。
(注)後の写真で示しますが、この機種の場合、一番表面のものは磁気ヘッドがついていませんでした。下2枚の裏表と一番上のディスクの下側に磁気ヘッドが差し込まれていました。
従って、実際の磁気ヘbドがあるのは最上面に伸びているアームより1cm程度先の部分になります。
13.磁気ヘッドのアーム部分を外してみましょう
アーム部分を外すにはまた、星形のネジと戦わなければなりません。
やっかいですが根気よくマイナスドライバーで星形ネジを外します。
14.やっと外れました!
やっと外れました! これから磁気ヘッドの付いたアームを素早く、そして正確に動かす位置決め装置(アクチュエーター)の分解にかかります。
15.位置決め装置を留めているネジを外します
外から見えるネジを外します。
16.上側の部品を外しました
上側の部品を外しましたが、ここで大きな発見です。ここには超強力な磁石が使われています。写真の下の方の扇形のものは磁石です。
17.扇形の小さな薄い磁石が、5Kgの鉄アレイを持ち上げることが出来ました!
超強力な磁石の力を試すために5Kgの鉄アレイをぶら下げて見ました。十分に持ち上げることが出来ます。
磁気記憶装置であるハードディスクの中にこれほど強力な磁石が使われているというのは意外でした。
18.位置決め装置の下の部分のネジも取ります
下側のネジも外します。アームの下側にも上側と同じ形の磁石が使われています。
アームにはコイルの配線が見えます。上下2つの強力な磁石の間の磁界の中で、アーム側のコイルに電気を流して、アームを動かし精度の高い位置決めを行っているようです。
たぶん、消費電力も小さく、極めて高速で作動し、アームの先端に付けられているヘッドの正確な位置決めのためにはこのような仕組みが有効なのでしょう。
ハードディスクの磁気ディスクは超高速で回転しています(最近のものは7200回転/分くらいのものが多い)。そんな高速回転に追従して正確な位置決めを行うには、いろいろな工夫がされているのでしょうね。
19.アームと磁気ヘッド
アームと磁気ヘッドです。アームの右側の先端には磁気ヘッドが取り付けられています。磁気ヘッドは、磁気ディスクのそれぞれの面に対応するように複数取り付けられています。
20.磁気ヘッドです
先端の黒く四角いものが磁気ヘッドだと思われます。このハードディスクの場合には、3枚の磁気ディスクのうち下の2枚の両面と、一番上の磁気ディスクの下側が実際には使われていたようで、磁気ヘッドもそれに対応して5個が取り付ッられています。
下側2枚に対応する磁気ヘッドは磁気ディスクを挟み込む形で、上のディスク用の磁気ヘッドは下側からディスクを持ち上げるような形でセットされていました。
磁気ヘッドはハードディスクが使われていて、磁気ディスクが回転している時にはディスクの表面の空気によってわずかに持ち上げられ、わずかな隙間でディスクから浮いているのだそうです。
21. 3枚の磁気ディスクを分解します
今回もまた星形の特殊ネジを外さなければなりません。特別な工具がありませんので、小型のマイナスドライバーで代用です。
ディスクはすばらしい精度の鏡と同じです。何かに利用できるかもしれません。
ディスクの間には適切な間隔を維持するためでしょう、輪っかが入っています。磁気ディスクの中心部にあるのはモーターだと思われます。高い信頼性と耐久性を持った重要部品です。手で回すと実にスムーズに回ります。
22.ハードディスクの分解を終えて
今回の「ものこわし」は特殊ネジに苦しめられました。たぶんメーカー側の考えでは、極めて精密な部品が使われているため簡単に誰でも分解するとメンテナンスサービスがうまく行かない可能性があるということでしょう。
今回は位置決め装置(アクチュエーター)の構造と使われている磁石が印象的でした。ハードディスクの構造図等を見てもアクチュエーターと表示されているだけのものが大多数です。強力な磁石を使ったリニアモーター方式の駆動機構が入っているというのは今回初めて知りました。
高速回転をする磁気ディスクと、位置決め装置という可動部品を組み合わせた構造を持ちながら、ますます増える記憶容量に対応し、高い耐久性と信頼性を実現するには目に見えない部分で種々の工夫がされているのでしょう。大変に面白い「ものこわし」でした。