月面のVR体験「MOON DIVE」内覧会・記者発表

VRと重力体験で月に行った気分 アテンド体制で常設展示にお墨付き

佐賀県立宇宙科学館《ゆめぎんが》はJAXAの小型月着陸実証機(SLIM)月面着陸をリアルに再現したVR(仮想現実)を体験できる「MOON DIVE(ムーン・ダイヴ)」を導入、翌日の一般公開に先立ち202662()、内覧会と記者発表会を同館で開きました。

SLIMのイマーシブ体験ができる科学館は全国で初めて。鈴木明子館長とJAXAの元SLIMプロジェクトマネージャー坂井真一郎さん、VRを開発した三菱電機エンジニアリング鎌倉事業所の菅澤正光さんが、世界初のピンポイント着陸を達成したSLIMが月面に降り立つ様子を疑似体験できる新しい展示施設の価値や今後の月面探査への展望を語りました。内覧会では地球発見ゾーンに設置した展示施設で参加者が月面探査の感覚を味わいました。

本物の技術とデータ駆使

月面への有人着陸をめざすアルテミス計画が進む中、鈴木館長は「SLIMプロジェクトは月へ行くための重要な技術」とピンポイント着陸の意義を紹介し、「宇宙開発の本物の技術とデータを駆使してイマーシブに再現することができたことで、開発関係者だけでなく、県民やたくさんの方が体験できるようになりました」と胸を張りました。「月の重力を体験できる3階の宇宙発見ゾーンのグラヴィティ ジャンプと合わせて体験することで、月に行ったような気分を体感できます」と楽しみ方を解説しました。


着陸精度が飛躍的に向上

現在はJAXA宇宙科学研究所で宇宙機応用工学研究系教授を務める坂井さんは、それまで目標地点から数キロ以上だった着陸精度を一気に10メートルに縮めたSLIMの成果を解説。出来上がったVRは「ただのCG(コンピューターグラフィック)じゃない」と話し、実際の機体、着陸する際の降り方やスラスタの吹き方なども事前のシミュレーションデータをもとにした本物に近い動きで、「たくさんの方に出来上がりをほめてもらい、イベントなどでの期間限定公開ではなく、常設展示で一般の方に見てもらえないかと思っていました」と話しました。

VRのヘッドセットはケーブルにつながっているため「横にアテンドしていないと、体験は難しい」と坂井さんが思っていたところ、2年前、宇宙科学館に講演に行った際、アテンダントがついて展示施設を体験してもらう体制ができているのを見ました。子どもにやさしく寄り添っている姿を見て、「ここだったら大丈夫」と確信、「常設公開を実現でき、大変うれしく思っています」と振り返りました。坂井さんはSLIMが着陸する前から、データを見る時などいろいろと使い道があり、可視化することで現場でも役に立てようと、当初は一般公開までは思っていなかったそうです。


SLIMの質感、影もリアルに

VRを開発した三菱電機エンジニアリング鎌倉事業所生産情報技術部長の菅澤正光さんは技術的な部分で解説を補足。機体は設計データから質感にもこだわりSLIMの金色の機体はリアルにできていると自負、地球や太陽の位置関係、月のクレーターの大きさや位置をNASAJAXAのデータから再現し、着陸地点の詳細な石のデータや影もリアルに作り込んでいます。人工衛星の設計に参画している鎌倉事業所とVRを製作している和歌山事業所のエンジニアがコラボしてできたのがこのVRです。

 

リアルにこだわった思いに対して、鈴木館長は「宇宙科学館であることにつきます。人類がまた月に行こうという時代、人間の感性にはリアルの力が大きいと思います。すべての人類に見ていただきたい」と結びました。坂井さんは「宇宙に興味をもってもらう入り口、きっかけになれば」と話しました。

《編集後記》チャレンジする文化とチーム力

月面着陸へのピンポイント着陸という画期的な偉業を成し遂げた背景について坂井さんは「JAXAにはやったことないことにチャレンジする文化がある」と答えました。世界を驚かせた小惑星イトカワからサンプルリターンを果たした探査機「はやぶさ」などにも象徴されるようなチャレンジ精神があるのでしょう。VR開発でも三菱電機エンジニアリングが鎌倉と和歌山の事業所でタッグを組んで実を結びました。ロケット開発などすそ野の広い宇宙事業で、個人が有機的に結びついた高い「チーム力」が随所に垣間見えました。

今回のVR常設展示は宇宙科学館も合わせた三者がスクラムを組んで実現することができました。

体験料500円(入館料は別途)
※体験は中学生以上

小学生以下はモニター映像をお楽しみください


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