トピックストップ

*** 計算尺 (1) ***

** 計算尺は興味をそそる不思議な存在でした 
最近は計算尺を見る機会はほとんどありません。若い人にとっては、すでに「見たり触ったりしたこともない存在」になっていることでしょう。
私は子供の頃、叔父が持っていた小さな少し変わった「ものさし」を計算尺だと教えられて、何故「ものさし」で計算が出来るのか不思議で仕方ありませんでした。
動かしてみても特に何も起こりません。どう役に立つのかサッパリ分からないものでしたが、それでも何となく精巧に出来たハイレベルの品物だというイメージを持ちました。

** 面倒な計算で楽をしたいという下心 
何年生の時だったかよく覚えていませんが、中学生の頃、計算尺を買ってもらいました。下の写真にあるものです。
計算尺を欲しいと思ったのは、「計算で何とか楽をしたい」という下心があったと思います。その後、わずかな時間でしたが中学校あるいは高校で計算尺に関する授業もありました。私自身は計算尺を高度に使いこなしをしたとは思いませんが計算尺はなつかしい道具です。

** 楽をしたいと思うことも必ずしも悪くない? 
多分、計算尺を考案した人は、「簡単に計算をできる便利なものを作りたい」という強烈な思いがあって計算尺というすばらしい工夫/道具に到達したのではないかと思います。その意味で、「楽をしたい」、「快適に過ごしたい」などという動機は必ずしも悪くないと信じています。

今ではほとんど見ることがなくなった計算尺


<これが計算尺>
今では計算尺を作ってはいないようですが「ヘンミ」という日本の計算尺メーカーの竹を素材にして上にプラスティックをかぶせた計算尺です。
竹は湿度の変化で狂いが少なく素材として適していたようです。内側には左右にスライドする部分があります。「カーソル」と呼ばれる左右に自由に動く上下の目盛の照準具が取り付けられています

<電卓の登場で急速に使われなくなった>
電卓の登場により今ではほとんど見ることがなくなりましたが、電卓が登場する前には、「かけ算」、「割り算」を簡便にこなすための便利な道具でした(上級者は単に「かけ算」、「割り算」以外にも複雑な計算に利用していました)。

** ポケットに入る道具で「割り算」や「かけ算」が出来るという感激! 
電卓が100円ショップで買える時代ですから、ポケットに入る小さな道具で「割り算」や「かけ算」が出来るということへの感激は今ではなかなか実感出来ないでしょう。
しかしながら、素晴らしい工夫だったからこそ、300年にわたって高度な道具として活躍することが出来たのだと思います。
「対数」と聞くだけで拒否反応が出るかもしれません。私も○○年前のことですから「対数」についてはすっかり忘れました。しかしながら、「計算尺が対数を利用したもの」で、「対数での足し算は、かけ算」、「対数での引き算は割り算」になると言われたことを覚えています。
電卓がなかった頃、対数表などを持ち歩かなくても、計算尺を持っていれば簡便に「かけ算」や「割り算」の結果を知ることが出来るすばらしい道具だったのです。

** 対数目盛ではなく通常の目盛りで・・・ 
計算尺は対数の目盛が刻まれていますが、ごく普通の等間隔で目盛が刻まれた「ものさし」を2つ並行に並べると、「割り算」「かけ算」ではありませんが、「引き算」「足し算」をすることが出来ます。まず、等間隔で目盛が刻まれた「ものさし」を数字をずらして並べると・・・


等間隔の目盛りの「ものさし」でも計算が出来ます!

<「ものさし」2本を使って計算!>
等間隔の「ものさし」2本を使うと「引き算」「足し算」が出来ます。等間隔の「ものさし」で実際に「引き算」「足し算」が出来ることを確かめてみましょう。等間隔の「ものさし」で計算が出来るなら、等間隔の目盛りを対数目盛に変えると「割り算」や「かけ算」が出来るということも分かりやすくなるのではないでしょうか?

<まず、「引き算」を考えてみましょう>
上の絵を見て下さい。上の「ものさし」と下の「ものさし」の差が一定になっているのが分かります(下の数字から上の数字を引くといずれも「2」で一定ですね)。「引き算」は簡単に出来そうですね。

<例として「6−4」という「引き算」>
上下の「ものさし」の差が一定ですから、上の「ものさし」の「0」に対応する下の「ものさし」の数字は「2」ですね。
そうです、上の「ものさし」の「0」の下の数字が「引き算」の答えとなるのです。
「6−4」という「引き算」を考えると、答えが上の「ものさし」の「0」の下に「2」として得られることが分かります。

「足し算」では・・・

<足し算>
次に「足し算」を考えてみましょう。「引き算」の反対が「足し算」ですからこれも出来そうですね。実際に「3+4」を例に考えてみましょう。
下の「ものさし」の「3」に上の「ものさし」の「0」をまず合わせます。次に上の「ものさし」の「4」の部分に対応する下の数字が「7」が「足し算」の答になっていることが分かりますね。

無限に長い「ものさし」ではないので・・・

<無限に長い「ものさし」?>
この「ものさし」は無限に長いわけではありませんから数字によっては使えなくなりそうです。その通りです。

<「0」の代わりに「10」を使う・・・>
足し算の場合の「2+8」や「2+9」の場合を考えてみましょう。「0」ではなく「10」を下の「ものさし」の「2」の位置に合わせます。その状態で、上の「ものさし」の「8」や「9」に対応する下の「ものさし」の数字を見て下さい。それぞれの数字に「10」を加えると答になっているのが分かります。
「ものさし」の左右の端をうまく利用し、暗算で概数を考えれば無限に長い「ものさし」がなくても何とかなりそうですね。



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