トピックストップ

*** 計算尺 (2) ***

** 今度は、対数目盛の「ものさし」を並べてみましょう・・・ 
対数目盛の「ものさし」には当然のことながら、計算尺の写真を使います。
下の写真の丸を付けた2つの目盛(左側に「C」と記された目盛とその下の目盛=写真では見えませんが「D」尺と呼ばれています)は対数目盛が左から右に記された全く同じ目盛の「ものさし」です。

(注)対数目盛は、0=log1 で、目盛の起点が「1」になります。このため対数目盛を刻んだ「C尺」「D尺」は、左端が「1」から始まっています。計算尺ではこの「1」の部分を等間隔の「ものさし」での計算例の「0」と同じ様な使い方をします。

対数目盛の「ものさし」を2つ平行に並べてみます・・・

<2つの対数目盛を並べると、上下の数字の比率が一定>
2つの「ものさし」の目盛の関係を見てみましょう。ご覧の様に、上下の数字の「比」が同じになっています。つまり下の「ものさし」の数字を上の「ものさし」の数字で割れば、答えはどの部分でも一定の「2」であることが分かります。
そうです。等間隔の目盛りでは上と下の「差」が一定でしたが、対数目盛の「ものさし」を並べると上下の数字の「比」が一定になります。

<上下の数の「比」(一方の数字を他方の数字で割った値)が一定ですから「割り算」は出来そうです>
上下の「比」が一定ですから下の「ものさし」の数字を上の「ものさし」の数字で割れば上の「ものさし」の「1」の部分の下に「2」という答えが得られることが分かります。
「4÷2」でも、「3÷1.5」でも同じように上の「ものさし」の「1」の下に答えが得られます。つまりカーソルを「下の任意の数」と「上の任意の数」を合わせると、上の「ものさし」の「1」の下に「割り算」の答えが得られることになります。

<電卓と違い「小数点の位置」、「桁」は自分の頭で考えなければならない!>
計算尺で計算する時には「4÷2」も、「4÷20」も「40÷2」も計算尺の上の同じ場所を見ることになります。その上で、頭で「桁」、「小数点の位置」を考えて、それぞれ「2」「0.2」「20」という答えを得ます。つまり計算尺は3−4桁の有効数字を得て、それに対する小数点や桁の位置は暗算するという使い方をするということになるわけです。

<「かけ算」も考えてみましょう>
「かけ算」は等間隔の「ものさし」を使った「足し算」と同じ様なやり方です。
例として同じ写真を使うことの出来る数字を考えましょう。「2×2」の計算をします。まず、上の「ものさし」の目盛の基点の「1」を下の「ものさし」の「2」に合わせます。次に上の「ものさし」の「2」の下の数字「4」を見れば答えが得られたことが分かります。

<「かけ算」でも「小数点の位置」、「桁」は自分の頭で考える>
「かけ算」の場合も頭で「桁」、「小数点の位置」を考える必要があるのは同じです。従って、「2x2」、「20x2」も「200x20」も計算尺上の操作は同じで、頭でそれぞれ「桁」、「小数点の位置」を考えて適切な答えを得ることになります。


対数目盛で「足し算」をすると「かけ算」の答が・・・


<対数目盛で「足し算」>
「2×3」の「かけ算」について考えて見ます。
対数目盛で「2」の位置までの長さが2段目の目盛として示されています。
同じように「3」の位置までの長さが3段目の目盛として示されています。
2段目と3段目を合わせたもの(対数目盛を「足し算」したもの)が4段目として示されています。
対数目盛の合計の上の対数尺の数字が「6」になっているのが分かると思います。そうです、「2」×「3」の「かけ算」の答が対数尺の上に得られるのです。
これが、対数での「足し算」が「かけ算」になるということです。同じように対数で「引き算」をすると「割り算」の答を得ることが出来ます。

** 「割り算」より「引き算」、「かけ算」より「足し算」の方が楽? 
もちろん個人差はあるでしょうが、「割り算」より「引き算」、「かけ算」より「足し算」の方が楽というのが一般的な考えではないでしょうか? これが計算尺が工夫された大きな理由でしょう。
対数を使った計算では、「割り算」を(対数どうしの)「引き算」、「かけ算」を(対数どうしの)「足し算」でやります。計算尺はこれを「ものさし」の上で実現しています。
目盛に対数目盛を刻むことで対数への換算表などを持ち歩かなくても対数計算をすることが出来る様工夫しています。

** 概数をつかむための計算道具 
計算尺を使った計算は「ものさし」に刻んだ目盛を読んで結果を得るものですから、概数しか得られないという制限がつきます。計算尺の有効桁数は3−4桁ですからそれ以上の数字がからむ計算では当然精度は落ちることはやむを得ないものでしたが、電卓が簡単に手に入らない頃は計算尺は「割り算」「かけ算」の答えを得る重要な手段としていろいろな場で使われました。

** 対数の考案 
計算尺で使われている「対数」は、1614年、John Napierによって考案されました。これにより、「割り算」を「引き算」、「かけ算」を「足し算」として出来るようになりました。
これだけでも計算の簡便化のためには大きな進歩でしたが、実際に計算をするためにはそれぞれの数を対数に換算するための換算表を参照しなければならず必ずしも十分に簡便なものではありませんでした。

** 対数目盛を一線上に 
1620年 Edmund Gunterが対数目盛を「ものさし」状の棒の上に対数目盛を刻み対数表を毎回参照しなくても「ものさし」状の棒を見れば対数を知りことが出来る様工夫しました。

** 計算尺は忘れ去られようとしているが、素晴らしい人類の工夫の一つ 
更に,1625年、William Oughtredは、Gunterの考えた対数目盛の「ものさし」を2つを組み合わせてスライドさせる現在の計算尺の原型を考えました。
その後、17世紀の終わり頃までには種々の形の計算尺が考案されその後300年間にわたって使われました。しかしながら残念なことに1970年代に電卓が登場に伴い、急速に姿を消しました。
電卓が安価に手に入る時代になり趣味で使う以外には使いたいと思う人はいないかもしれませんが、計算尺は人類の素晴らしい工夫の一つだと思います。



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