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見えるままを記録する工夫
=スキャン(走査)するというアイディア(1)=

スキャンの考え方

☆画像は縦横に広がった2次元の情報を持ったもの
画像は縦横に広がった2次元(面)の情報を持ったものですが、細く線状に分割して走査して行くと連続した1次元(線)の情報になります。

☆円筒の上の糸に書かれた「カメラ」の字は2次元の情報
上の写真のように円筒の上に糸を巻いてその上に画像(この場合は「カメラ」と手書きした字)を配置すると、そのままでは、縦横に2次元の広がりを持った情報になります。

☆糸をほどくと縦横に広がりのない線の上(1次元)の情報として表現される
筒の上の糸をほどいて行くと、縦横の2次元に広がった情報も、糸(1次元の線)の上に黒く塗られた部分とそうではない部分として表現されます。

☆細かく線状に分割して走査(スキャン)すると1次元の情報になる
このように、2次元の面の上に表現された情報も、細かく線状に分割して走査(スキャン)すると1次元の情報になります。円筒上の糸が集まった面(2次元の面)上に書かれた「カメラ」という字は、糸をほどいて行くことで、1次元の線(糸)の上の白か黒として表現されます。

☆種々の場面で利用されるきわめて重要な工夫
2次元の情報を1次元の情報に変換して取り扱うスキャンの考え方は、種々の場面で利用されるきわめて重要な概念です。


デジタル記録の基礎になるスキャン(走査)の工夫が芽生えたのは19世紀中頃
デジタルカメラやデジタルビデオ、・・・デジタルという言葉は現代の流行語のように種々の場面でつかわれています。「見えるままを記録する工夫」でも当然デジタル化の波は押し寄せてきています。意外なことにデジタル記録のための極めて重要な工夫であるスキャンの工夫は、写真技術とほとんど違わない時期にあります。
デジタル記録と聞くとつい最近の技術として登場した様な印象を受けがちですが、その始まりは19世紀中頃までさかのぼることになります。

写真を電信に載せるためのスキャン(走査)の工夫
映像を電信にのせて送るために電気信号に変えるというためには、映像(光)を電気信号に変換することの出来る材料とともに、2次元の画像(面に記録された情報)を1次元の情報に分解してとらえる、スキャン(走査)の工夫が重要でした。これはテレビやファクシミリに不可欠な工夫であるとともに、デジタルでの記録でもなくてはならない技術です。
スキャンの概念はベイン(英)に始まると言われています。彼は1843年画像を分割・スキャンして電信で送るファクシミリの原型を発明しました。この時、彼は「振り子」の揺れを利用して送信側、受信側のタイミングを合わせる工夫をしながら(同期を取りながら)画像をスキャンしました。

ベインは画像を少しずつ動かしながら、振り子に付けた針で走査
画像は縦横2次元の情報を持ったものですが、ベインは、針のついた振り子を規則的に振らして画像の上を針でなぞり、振り子が1回動く度に少しずつ画像を進めることで平面上の画像を何本もの1次元の情報として処理することを思いつき、画像を電信に載せることを考えました。
彼のファクシミリそのものはそれほどうまくは動かなかったようです。しかしながら、彼はファクシミリの特許を取得していますし、画像をスキャンするという後に非常に大切になる概念を思いついたことになります。
縦横の広がりを持った2次元の情報を1次元に分割することで、連続的な信号として電気信号に変換する道を拓きファクシミリだけでなく、テレビ、ビデオ、デジタルカメラ等の信号処理の基礎の基礎を築いたことになります。

画像をドラムに巻き付け回転させてスキャン
ベイクウエル(英)はベインの方式のファクシミリを改良し、画像をドラムに巻き付けて回転させてスキャンする方式を考案し、1851年の国際博覧会で実演しました。
ドラムに巻き付けた画像をスキャンする方式は写真電送機としてつい最近まで通信社や新聞社などで使われていた、スキャンの方式としては非常に基本的な方法です。



最近まで使われていたドラム式の写真電送機

上の写真は通信社の現場で使われていた写真電送機です。取材で撮影した写真を電話線を通して送るために使われていました。この電送機はカラー写真も電送出来るように画像を3原色に分けて読み取る3個の読み取りヘッドを備えていました。
ドラムに巻き付けた画像をスキャンする方式は写真電送機として最近まで通信社や新聞社などで使われており、決して昔々の忘れ去られたような技術ではありません。
このようなドラムに画像を巻いてスキャンする方式は、スキャンの方式としては非常に基本的な方法です。

共同通信社提供


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