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見えないものを見る工夫
=レーヴェンフックをまねて手作り顕微鏡(1)=
<レーヴェンフックの顕微鏡>
顕微鏡は16世紀の終わり頃オランダのヤンセンが2つのレンズを組み合わせることで始まりましたが、レンズの加工精度が悪く、色収差や球面収差の問題が解決されなかったため、これらの問題が克服されるまで、複数のレンズを組み合わせた複数のレンズを組み合わせた顕微鏡はあまり高い倍率で観察することが出来なかった様です。
そんな中、17世紀の後半、オランダのレーヴェンフックは単純ですが、画期的な顕微鏡を発明しました。レンズとして球形のレンズを小さな穴の空いた2枚真鍮(しんちゅう)板の間に挟んだだけの顕微鏡でしたが、19世紀の初めまでは、色収差や球面収差の問題を抱えていたレンズを組み合わせた顕微鏡よりも{率も高く品質の高い顕微鏡でした。
レーヴェンフックの作った単レンズの顕微鏡は200倍以上の倍率で観察することが出来たそうです。

レーヴェンフックの顕微鏡(複製 浜野顕微鏡所蔵)

<レーヴェンフックの顕微鏡をまねて手作りの顕微鏡を作ってみましょう>
本格的な顕微鏡を作ろうとすると大変ですが、レーヴェンフックの顕微鏡は真鍮(しんちゅう)板の中に球形レンズを挟んだだけの単純な構造。手近な材料でまねが出来そうです。
もともと、レーヴェンフックはアマチュアの科学者。当時、高価な顕微鏡を使うのは難しかったのかもしれません。そんな中、彼の工夫、アイディアが偉大な結果を生み出しました。

<球形レンズに代えてガラスビーズ、真鍮板の代わりにプラスチック下敷>
使用するガラス玉の直径により焦点距離が変わります。ここでは約1.5mmのガラス玉とプラスチック下敷きを使って自作します。レーヴェンフックの顕微鏡は観察対象物を針先に載せて観察したようですが、ここでは、観察対象は通常の顕微鏡のようにプレパラートにセットして観察します。針先に対象物を載せて観察するよりプレパラートを使う方がずっと楽に観察出来るようです。

<小さなガラス玉の焦点はガラス玉の表面からほんのわずかな距離!>
小さなガラス玉の焦点はガラス玉の表面からほんのわずかな距離です。このため、プレパラートのカバーガラス側をビーズのレンズにピタッと合わせるとほぼ焦点があいます。
小さなガラス玉を使った方が倍率は高くなるようですが、作業はやりにくくなります。

<用意した材料>
1)直径1.5mm程度のガラスビーズ
(工業用の素材ですが1kg単位くらいで購入可能。3000円〜3500円/kg程度です)。
2)1.5mm程度の厚さの下敷きを3cmx8cmにカットしたもの2枚。
3)セロテープ
4)直径1.2mm穴空け用ドリル(工具類を扱っている店で入手可能)

ガラスビーズ

レンズとして約1.5mm程度のガラスビーズを使います。レンズとして作られたものではありませんが、この種の工作用には十分使用可能です。レーヴェンフックの時代に手作りで磨いたものより精度がいいかもしれません。
レンズとして磨いたものも購入出来るようですが、レンズ1個で3000円くらいの値段になるのではないかと思います。


真鍮(しんちゅう)板の代わりにプラスチックの下敷きをカットしたもの代用

プラスチックの下敷きをカットし、直径1.2mm径の小さなドリルで先端部に穴を開けます。レーヴェンフックの顕微鏡は小さな穴を空けた真鍮(しんちゅう)の板の間にビーズ状のレンズをはめ込んでいましたが、真鍮(しんちゅう)の代わりに黒い不透明のプラスチックの下敷きを使います。

ビーズをはさみプラスチックをセロテープで止めます

ビーズには若干の大きさの違いがあります。穴より若干大きめのガラスビーズを選びます。穴より若干大きなビーズを一方のプラスティック板の穴の上に載せ、他方のプラスティック板をかぶせて挟み込み、セロテープでプラスチック板を止めて完成です。
セロテープで止めるというのはあまりに雑に見えますが、これが簡単で、確実な方法だと思われます。

これでも顕微鏡!
こんなものが顕微鏡だと信じられますか? レーヴェンフックの顕微鏡は観察対象物を載せるための針が備えてありましたが、ここでは観察対象物はプレパラートにセットして観察します。
1.5mmのガラスビーズの焦点距離は極めて短く、この方法で作った顕微鏡の場合、プレパラートのカバーガラス側をレンズ側に合わせて覗くとほとんど焦点が合います。


手作り顕微鏡で見たコルクの細胞

手作り顕微鏡で見たコルクの細胞。コルクは細胞(Cell)という言葉が使われる基になった栄誉ある観察対象物です。
イギリスのロバートフックは、顕微鏡(彼が使った顕微鏡はレンズを組み合わせた特注の高価なものでしたが、倍率や精度ではレーヴェンフックの顕微鏡より劣っていたのではないかと思われます)を使った研究結果を1665年に「Micrographia」という本にまとめました。
コルクを顕微鏡で観察したところ、仕切りをした部屋の様な構造が見え、それを「Cell」と名付けました。これが細胞の語源になっています。
単レンズの手作り顕微鏡でも細胞がよく見えます。この写真は実際にこの手作り顕微鏡で見える様子をデジタルカメラで撮影したものです。
デジタルカメラでの撮影については、次ページで説明します。

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