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*** 柔軟に曲がる金属管 ***

簡単に曲げることの出来る金属管/ホースはどんな仕組みで出来ているのでしょうか?

金属を巻いて管/ホース状にしたと思われる構造ですが継ぎ目から水が漏れてこない・・・。簡単に曲げることが出来る・・・。
こんな金属管/ホースをご覧になったことがありますか? 構造がどうなっているのか知りたいと思いませんか?
昔の瞬間湯沸かし器にはこんな金属製の管/ホースが付いていました。水道の蛇口に取り付けたりしているものを見ることがあるかもしれません。金属を使って水が漏れないで、かつ柔軟に曲がる管/ホースはどんな仕組みになっているのでしょうか?
何はともあれ、実物の写真を見ると「ああこれか・・・」と今回の分解の対象物を分かって頂けるでしょう。今回はドライバーでネジを外せば分解出来るというわけには行きません。金属を切るという作業が必要になります。

(注)金属製の管/ホースは今回分解するものの他、シャワーホース等に使われているものもあります。どうもこちらは構造が違うようです。シャワーホース等として使われている金属製の管/ホースの分解は別途チャレンジしたいと思います。

1. 今回の分解対象です。古いタイプの湯沸かし器に使われていましたね。


ステンレスで出来た管/ホースですが比較的自由に曲がります。今はあまり一般的ではないかもしれませんが、金属で柔軟に曲がると同時に水が漏れない密封の工夫がどのようなものかを知りたいとは思いませんか?この金属管/ホースはグニャグニャ曲がるというほど柔らかくはありませんが、一度曲げるとその形を保持するので湯沸かし器や水道の蛇口で使うものとして適切な柔軟性を持っています。

2. まず先端部のカバーを外します

今回は、分解と言ってもドライバー等で分解は出来ません。
先端部は、はめ込み式だと思われますがペンチ等では外れません。まずその部分をダイヤモンドカッターで外側に切り目を入れます。切り目を入れてしまえば簡単でした。もともと先端部にはめ込むだけの構造だったようです。溶接等はされておりません。

3. 内側も螺旋状に巻いた金属が見える。

 まず管の内側を覗いてみましょう。内側も金属が螺旋状に巻いた構造が見えます。水が漏れないように別のホースを入れるということはされておりません。2重構造ではなく、金属の構造だけで水が漏れない仕組みが出来上がっているようです。

4. 螺旋状の部分を切り出してみます

螺旋状の部分を切断すると、金属の組み合わせた構造が見えます。

5. 断面を図示すると・・・

断面はSの字を横のしたようなものがつなぎ合わされているようです。螺旋の山2つが1セットで次々に組み合わされて丸く管状に巻き上げられて金属ホースになっています。

6. 組み合わせられている部分を切り出して、更に分解してみます

左右のSの字の先端部を組み合わせて圧着してあります。また、ここまで分解して見ると、左右を組み合わせる部分に糸のようなものが挟み込まれているのが見えます。この糸が左右組み合わせたときに水が漏れないようにパッキンの役割を果たしているのでしょう。Sの字を組み合わせ、間に水漏れを防ぐためのパッキン材として木綿の糸を入れているようです。

7. よく見ると下の図の様にSの字の間に木綿糸が組み込まれています

金属を圧着する際に木綿糸を間に挟み、水が漏れないように工夫されています。。

8. 折り紙でこの構造を考えてみましょう

 S字の部分は簡略化すればこのように両サイドに逆向きの折り返しがついた構造と言えます。これが組み合わされて螺旋状に組み上げられていることになります。紙の上の線は組み合わせた時に見やすくするためのものです。

9. 管/ホースはこのような組み合わせで螺旋状となっています

 グルグル巻き上げる際に両方の折り返しが組み合わされてつながって行く構造です

10. もう少し組み合わせを進めてみましょう

 だいぶホースを想像できる形になりましたか?

11. ここまで来ればホースの構造が想像出来るでしょう?

構造を連続的にどう作っていくのかを見てみたいものです。しかしとりあえず構造としてどのような構造になっているかは分かりました。
このように組み合わせて行く際に組み合わせる折り返しの間に木綿糸を挟み込み、組み合わせた部分から水が漏れないようにしてあります。

12. どのような構造になっているのは分かりましたが、なぜ簡単にに曲がるのでしょうか?

 なぜ金属製でありながら柔軟に曲がるのでしょうか? 形状が似たものに、上の写真のような水道等の配管の曲げ部分に使ってある金属管がありますね。ジャバラ状/波状に加工してあります。特別な道具を使わなくても比較的簡単に曲げることが出来るので、狭い場所で水道の配管等を行うときには非常に便利です。金属管が波形に加工されていることが重要だと思われます。波形に曲がりやすくなる秘密があると思われます。

13. 同じ太さの銅線で真っ直ぐな線と波状に折り曲げたもので比較してみましょう

波形にすると本当に曲がりやすくなるのか試してみましょう。
真っ直ぐの銅線と波状に折り曲げた銅線の先端に同じ重さの重りをつけます。下側の写真のように波状の曲げをつけた方が大きく曲がっています。
金属線が曲がる時、線には伸びる部分と圧縮される部分が出来ます。波状のものは真っ直ぐな線よりはるかに長いものを波状に曲げて短くたたんでいるので、同じ長さ当たりでは伸びたり圧縮されたりする度合いが少なくなります。このため、先端では同じ力を加えれば楽に曲がることになると考えられます。
波形に加工して短く折りたたんだ構造にすることで上の写真に示したような波形加工をした金属管は曲がりやすくなっていると思われます。
金属を波形に加工することで曲げやすくなる

今回分解した金属ホースは、長い金属テープをS字状に折り曲げ、更にそれをジャバラ状に巻いた構造になっています。つまりS字の形が波形の役割をしており、真っ直ぐな管に比べればはるかに長いものを折りたたんだような構造になっています。
今回分解した金属管/ホースは、上の写真にある配管用の波形の金属管と形は違いますが長いものを短く折りたたむという点では共通点があります。これが金属で出来た管/ホースであるにもかかわらず、比較的柔軟に曲げることが出来るようにする秘密のようです。
今回分解した金属管/ホースのS字状の圧着による組み合わせ部分も少しは動くのかもしれません。このような工夫により金属で作った管であるにもかかわらず比較的簡単に曲げることができるようになっているようです。

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