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*** 水の流れを利用して水をくみあげる水車(揚水水車) ***

水車はのどかな田園風景を彩(いろど)るもの?
今では実際の作業に使われている水車を目にすることは難しくなってきました。のどかな田園風景を象徴するものとして絵本などに登場することが多いのですが、蒸気機関やエンジンが発明される以前 、水車は種々の動力源として使われました。自然の力を利用して、大きな力や休むことなく動かすことの出来る動力を得るための重要な存在でした。

めずらしい三連の水車。蒸気機関車を連想しませんか?


「霞ヶ浦ふれあいランド」(茨城県玉造町)の三連水車の模型
この水車からは力強く働く蒸C機関車を連想しませんか?
丸い水輪の両方の外側には一定の間隔で水を汲むための長四角の器を持った柄杓(ひしゃく)が設置されています。柄杓で汲み上げられた水は、上部に設置されている樋に水を流し入れます。水輪には水流を受けて回転運動をするための水受け板が取り付けられていて、水の中に入った水受け板は水の流れに押されて連続的に回転します。
この水車の模型は1985年に茨城県のつくばで開催された「つくば科学万博」の政府館(歴史館)に展示された福岡県朝倉郡朝倉町の菱野三連水車の模型です。これは茨城県玉造町の「霞ヶ浦ふれあいランド」に展示模型として置かれています。水の流れを動力として使うこの水車は蒸気機関車が持っていたのと同じような、なつかしさと同時に力強さを感じます。朝倉の地元では菱野三連水車は、「田んぼのSL」とも呼ばれているそうです。


福岡県の朝倉郡では今でも現役として活躍中!

「霞ヶ浦ふれあいランド」の三連水車の説明看板
この模型の元となった福岡県朝倉郡菱野の三連水車は今でも活躍している現役の水車です。筑後川から分かれた堀川用水から、菱野地区に広がる広い田んぼに水を供給するため現役として働いている揚水水車と呼ばれる水車です。電気やエンジンなどを使わない、水の流れの力のみで水を汲み上げ稲作のための水を汲み上げるすばらしい工夫です。
電気やエンジンで回すことの出来るポンプがなかった時代に水の流れの力だけを利用したもので、菱野の三連水車は水車としての頂点に立つ水車と言っても過言ではないでしょう。
福岡県朝倉郡の菱野の三連水車を見たいと思っていましたが、霞ヶ浦にかかる霞ヶ浦大橋のそばにある「霞ヶ浦ふれあいランド」にこの三連水車の模型が置かれていることを知り、先日見てきました。
朝倉町菱野は筑後川に沿った田園地帯で、この地域では菱野の三連水車を含む水車群が地元の稲作のための不可欠の存在として活躍しています。

水車は風車と同様に貴重な動力源だった

オランダのキンデルダイクの風車
ユネスコの世界遺産に登録されているオランダ キンデルダイクの風車群です。のどかな田園風景ですが、キンデルダイクの風車も極めて重要な実際的な目的を持って作られたものです。
水の浸水から海面より低いレベルの干拓農地を守るという実用的な目的のため、風の力を利用して水を汲み上げる目的で使われてきました。自然のエネルギーの風を利用し水を汲み上げる工夫です。
過去にはオランダでは約10000基の風車が動力源として使われていたそうです。その後、風車は、蒸気機関に置き換えられ、更に電気やディーゼルエンジンが使われるようになったそうです。
日本では古い時代に風車を動力源として利用する工夫はなかったようですが、水の流れを利用した水車に関しては様々な工夫がされたようです。水を汲み上げたり、粉をひく以外にも貴重な動力源として種々の用途に使われました。
水車は、風車と同様に人類の知恵、先人の知恵を感じさせるものです。水車を単に、なつかしい昔の農村の原風景として見るのではなく、古い時代に動力源として工夫されたすばらしいアイディアが込められているものとして、少し違った角度から眺めてみるのもいいのではないでしょうか?

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