館長の部屋タイトル
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私たちは便利な「もの」に囲まれ、快適な生活が出来る時代に生きています。ボタンを押せばテレビも映りますし冷房や暖房の効いた快適な部屋でくつろぐ事も出来ます。携帯電話やスマートフォンも極めて便利なものです。これらの快適な生活を支える便利なものは多くの人たちのアイディアや工夫、努力の結果として実現されたものです。しかしながら、この恵まれた生活が、身の回りの「もの」の仕組みや、その中に込められている工夫やアイディアの面白さへの関心を低下させているのではないかと危惧しています。

便利な「もの」が、中味や仕組みを分かりにくいものとし、その結果、「新しいものを知ろうとする意欲」を低下させ、理科離れ、科学離れの大きな原因になっているのではないかと考えています。便利なものに囲まれた世の中ですが、身の回りにある「もの」に込められたアイディアや工夫、仕組みに関心を持ち、少しでも中味を理解しようとすることが大切だろうと思います。ものの中味を理解することは簡単ではありません。しかしながら、ものの中味に関心を持つことは大切です。身の回りの種々のことに関心を持ち、好奇心の扉を大きく開くことが大切ではないでしょうか?

最先端の科学、科学技術も種々の工夫、アイディアの積み重ねることで実現されています。最先端の素晴らしい技も誰かがこつこつと論理的な努力を積み重ねた結果として出来上がったものです。魔法や祈りで完成したものではありません。すこしでも中味を理解しようとする努力が、最先端の科学、科学技術へ続く道です。

科学館は学校とは違い体系的な教育をする場ではありません。私たちは来館者が来館されたその時に「自分たちも何かをやってみたい」という気持ちを触発し、好奇心の扉を開けるきっかけつくりをしたいと考えています。「何かをやってみたい」という意欲を持つことは理科や科学だけの問題ではありません。資源が少なく人口の多い日本が将来にわたって幸せに生きていくためにはその基礎となる知的なレベルを維持・向上することが重要です。そのようなことを達成するための一助となる活動を続けて行きたいと思っています。

科学館は必ずしも子どものためだけの施設ではありません。大人も子どもも共に楽しみながら何かを学ぶための仕掛けがあります。特に親と子が「共に考え」、「共に協力」する場として最適な場だろうと思います。親子が対話する雰囲気が自然に出来上がる場が科学館です。大人も子どもも、そして親子が一緒になって宇宙科学館で楽しい経験をして頂きたいと考えています。
佐賀県立宇宙科学館・ゆめぎんが
シニアアドバイザー 許斐 修輔(このみ しゅうすけ)



 「ものこわし」のすすめ