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*** 歯ブラシの毛を固定する工夫 ***

<歯ブラシの毛がどのように固定されているのか不思議に思ったことはありませんか?>
毎日使う歯ブラシのナイロンの毛がプラスティックの柄にきちんと固定されています。かなりの力で歯を磨いてもナイロンの毛が取れることはありません。台座に開けられた穴の上側から埋め込むだけで、どうして簡単には抜けないように台座にしっかりと固定出来るのか、植毛の工夫に迫ってみましょう。

<手作業の植毛では、職人1人が1日に作ることの出来た本数は20本程度!>
1920年(大正9年)以前は歯ブラシの毛(この頃はナイロン毛ではなく馬や豚の毛)は手植えと呼ばれる手作業で行われていたそうです。このため、1日に1人の職人が作ることが出来た歯ブラシの数はわずかに20本程度。大変にやっかいで根気のいる作業だったようです。従って当時の物価水準で値段も相当に高かったのではないでしょうか?

<現在では1分間に50本のスピードで歯ブラシが完成>
その後、1920-1925頃になると「大正式」と呼ばれる手動式の植毛機が作られ、1日に1人が1000本程度作ることが出来るようになったそうです。現在では自動式の植毛機械で1分間に50本くらいの早さで歯ブラシが出来上がっているそうです。

透明なプラスティックの柄の歯ブラシ


歯ブラシの先端部
歯ブラシには多くの種類がありますが、ナイロン毛がどう植毛されているかを見るには透明な柄のついた歯ブラシが最適でしょう。歯ブラシには細いナイロンの毛がぎっしりプラスティックの台座の上に植え付けられています。この歯ブラシの場合、穴は23個。23個の穴にぎっしとナイロン毛が植えられています。いずれもきちんと固定されており簡単に抜けるような作りではありません。

<透明なプラスティックの中に埋め込まれたナイロン毛の根元をよく見て下さい>
上の写真は実際の歯ブラシの大きさよりかなり拡大されています。ふだんは見過ごされる部分でしょうが、ナイロンの毛の根元に何か金属が入っているのに気が付きましたか? これが謎解きのポイントだろうと思います。

更に裏側からの写真を見てみましょう

確かに金属らしきものが見えます
裏側から見ると金属らしきものが時計の針の11時の方向を指して穴の底に規則的に並んでいるのが見えます。どうやらこの金属でナイロンの毛を止めているようです。

実際に何が入っているのか、ナイロンの毛を抜いて確認しましょう


ナイロンの毛は簡単には抜けません
手で引っ張る程度ではナイロン毛は抜けません。ラジオペンチを使ってナイロンの毛を引き抜いて見ます。

ナイロン毛はV字型に2つ折りにして小さな金属板で固定


ナイロン毛はV字型に折って穴の中に固定
ナイロン毛は写真の様にV字型に折り曲げて小さな金属片(真鍮=しんちゅう)で押さえて穴の中に固定してありました。金属板の幅は穴の直径よりわずかに大きく、植毛する際にかなりの力で押し込むことで台座のプラスティックの中に食い込み、簡単には抜けない様になっているようです。
穴の直径はわずか1mm程度。この中にぎっしりとナイロン毛が植えられています
穴の直径は1mm程度。なかなか細かい作業です。機械植毛では裏側からワイヤーで固定する代わりに、穴の中にナイロン毛を2つ折りにして押し込んで、その上に金属板を押し込んで固定しているのですね。
金属線は平線(へいせん)と呼ばれるもの
小さな金属(真鍮=しんちゅう)板は、平線(へいせん)と呼ばれるものです。製造段階ではコイル状に長く巻かれたもので機械植毛の段階で、植毛のための穴毎にカットされてナイロン毛を穴に押し込んで固定するのだそうです。
<平線でV字型にまとめられたナイロン毛を固定>
歯ブラシのナイロン毛が植えられている穴は直径1mm程度。この中のナイロン毛を止めている金属片は、虫眼鏡で見なければよく見えないような小さなものです。この金属片を平線(へいせん)と呼ぶのだそうです。歯ブラシの製造工程では、この平線はコイル状にに巻かれていて、歯ブラシのそれぞれの穴に植毛する際にわずかに穴の直径より大きなサイズに裁断されてV時型になったナイロン毛をしっかりと穴の中に固定します。
<更に毛先を切りそろえ、先端を加工>
歯ブラシの製造工程では、植毛が終わったあと、歯ブラシの用途により、毛先切りそろえ、先端を丸めたり、逆に尖らせたりの作業を経て完成品になるのだそうです。細かな作業工程を経て歯ブラシは出来上がっています。
<現在では50本/分もの早さで植毛>
現在ではこの作業は自動作業で行われ1台の機械で50本/分の歯ブラシを作ることが出来るのだそうです。上から埋め込みながら簡単には抜けないようにしっかり植毛する工夫はなかなか面白いですね。

*歯ブラシの製造プロセスについては、ライオン(株)に教えていただきました。

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